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平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究 第四册

中期訓讀語體系

平安時代の佛書に基づく漢文訓讀史の研究
著者 小林 芳規
ジャンル 国語学(言語学)
国語学(言語学) > 総記・論集
出版年月日 2012/09/10
ISBN 9784762935947
判型・ページ数 A5・642ページ
定価 19,800円(本体18,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

第一章 總 説
第二章 寛平法皇の訓讀法
  寛平法皇の御事蹟と加点本/寛平法皇の訓読法〔自立詞・附属詞・副用詞・読添語〕   
第三章 石山内供淳祐の訓讀法
  淳祐内供の御事蹟/淳祐内供の書写加点本とその教学/淳祐内供の訓読法(一)〔自立詞・附属詞・副
用詞・読添語〕/淳祐内供の訓読法(二)〔自立詞・附属詞・副用詞〕/第四章・第五章の始に 特定
ヲコト点使用資料の訓読
第四章 慈覺大師點所用資料の訓讀法
  慈覺大師点の訓点資料/慈覺大師点の使用時期と使用者/慈覺大師点資料における表記面の共通性/
  慈覺大師点資料の訓読法〔自立詞・附属詞・副用詞・読添語〕/特に淳祐の訓法が混在する慈覺大師
点資料
第五章 順曉和尚點所用資料の訓讀法
  順曉和尚点の訓点資料/石山寺蔵蘇悉地羯羅経略疏天暦頃点の訓読法〔自立詞・附属詞・副用詞・読添
語〕/蘇悉地羯羅経略疏天暦頃点と淳祐加点本との訓読法の比較/順曉和尚点第二類資料の訓読法〔自
立詞・附属詞・副用詞・読添語〕
第六章 石山寺經藏の平安中期古點本の訓讀法について
  石山寺蔵の平安中期古点本/石山寺蔵平安中期点の訓読法/石山寺蔵平安中期点の訓点資料における
  特異な訓読語
第七章 天台宗三井寺の訓讀法
  天台宗三井寺の訓読資料/蘇悉地羯羅経巻上延喜九年点の訓読法/三弥勒経疏古点の訓読法/百法顕幽
  抄古点の訓読法
第八章 天台宗延暦寺の訓讀法
寛平法皇の訓読法と比叡山系点本の訓読法/阿弥陀房明靖の訓読法〔自立詞・附属詞・副用詞〕/天台
宗三井寺の訓読法との比較
第九章 眞言宗小野流の訓讀法
  小野流の祖、仁海の御事蹟/仁海の自筆加点本/仁海の訓読資料〔自立詞・附属詞・副用詞・読添語〕/
  仁海の訓読法の伝承
第十章 辯中邊論における眞言宗石山寺淳祐内供の訓讀法と法相宗興福寺空晴僧都の訓讀法
辯中邊論における淳祐内供と空晴僧都の加点/淳祐内供の訓読法と空晴僧都の訓読法の比較
第十一章 興聖寺藏本大唐西域記巻第十二平安中期點の訓讀法
  表記上の注目点/音韻上の注目点/和文系の語詞/訓読法について〔自立詞・附属詞・副用詞・読添語〕
第十二章 大乘掌珍論天暦九年點の訓讀法
 小川本大乗掌珍論巻上の書誌/小川本大乗掌珍論の訓点/天暦九年白点の音韻/天暦九年白点の語彙/
 天暦九年白点の訓読法〔自立詞・附属詞・副用詞・読添語〕/平安中期の同期の他資料との訓読法の比較
第十三章 石山寺藏佛説太子須陀拏經平安中期點の訓讀語について
  石山寺蔵佛説太子須陀拏経について/ヲコト点と仮名字体/仮名遣/和訓の施点方式/音韻/和文系の
  語詞とその使用場面/注目すべき語詞/訓読法の特性と新旧の事象/佛説太子須陀拏経平安中期点の訓
読語の性格
第十四章 平安中期訓讀語の泯亡と繼承
   はじめに―平安初期訓読語の泯亡―/平安中期前半期訓読語の泯亡/平安中期前半期訓読語の残瀝/平
安中期後半期訓読語の相承授受/結びにかえて―漢籍の訓読法による補説―

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内容説明

【第四冊 總説より】(抜粋)

  中期訓読語体系の中期は、その内容が平安中期十世紀に当る。平安中期十世紀は、日本語史上、平仮名が日本語を書記する文字として登場し、それによって和文が創成され、一方、私的の場では片仮名の和歌なども書かれ、当時の遺物も出現して来る。このように文字、表記の上から画期的な時期であるばかりでなく、平安中期は漢文訓読史から観ても、訓読法に新たな変化が生じた時期である。その変化を促進したのは、平安新興の天台宗と真言宗である。この平安新興の二宗は、平安初期九世紀初頭に、それぞれ最澄と空海とによって成立し、奈良時代末期の南都仏教を土壌としつつも、その批判として形成されたから、訓読法の上でも、平安初期に南都僧の間で行われた訓読法に対して、新要素が見られる。それは、前冊に説いたように、平安初期後半期の天台宗の加点本に窺われたが、平安中期になると、天台宗や真言宗の僧の手に成る訓点資料の遺存するものが得られ、それを通して訓読法の新しい変化の実態を具体的に知ることが出来るようになる。その訓読法の変化は、この時期の訓点資料の奥書の用語に現れる。本書第一冊、『叙述の方法』第四章の漢文訓読史の時代区分で説いたように、十世紀の平安新興仏教の資料に「伝授」の用語が見られるのがこれである。この用語は、平安初期末寛平年間の天台宗の訓点資料に見られ始め、引続きこの期にも天台宗の訓点資料に見られ、真言宗でも平安後期の資料には見られるようになる。これに連動して、平安中期十世紀になると、加点時期も加点者も異なる二種以上の訓点資料の間で、仮名字体が五十音図のアからヲに至るまで一致し、又、ヲコト点法も相互に一致する資料が現れるようになる。ヲコト点に乙点図(慈覚大師点と命名する)を用いる訓点資料群と、順暁和尚点を用いる訓点資料群とである。慈覚大師点を用いるのは天台宗比叡山の関係僧であり、順暁和尚点を用いるのは、石山寺の淳祐とその弟子達である。

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