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江戸中期以降遊里文藝考  新刊

江戸中期以降遊里文藝考

◎近世中後期の文藝において遊里はどう描かれ、それはどのような特徴を持っていたのか――

著者 長田 和也
ジャンル 日本古典(文学)
日本古典(文学) > 近世文学
出版年月日 2023/02/20
ISBN 9784762936814
判型・ページ数 A5・298ページ
定価 8,800円(本体8,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 文 (池澤一郎)
凡 例

序 論   
  一、先行する「遊里文学」への言及   
  二、本書の構成
 
第一部 洒落本を読む

 第一章 『遊子方言』再考
  一、『遊子方言』の洒落本史における位置    
  二、先行作からの影響
  三、登場人物は武士か町人か   
  四、『遊子方言』の読み方   
  五、おわりに

 第二章 『甲駅新話』における宿場女郎の手管
  一、はじめに         
  二、金七の性格        
  三、名代と廻し  
  四、三沢の手管        
  五、おわりに

 第三章 明治大学図書館蔵『客衆肝照子』の書き入れ

第二部 吉原のいにしえ

 第一章 早稲田大学図書館蔵『吉原恋の道引画巻』について
  一、はじめに     
  二、書誌   
  三、『画巻』成立年次と『吉原恋の道引』との関係
  四、星野六蔵について 
  五、考証資料としての『画巻』    
  六、おわりに

 第二章 『異本洞房語園』の諸本と式亭三馬
  一、はじめに     
  二、徒流による増補時期の下限 
  三、式亭三馬の書き入れを転写した本
  四、三馬の『異本洞房語園』受容     
  五、おわりに

 第三章 『契情畸人伝』の典拠をめぐる一考察
  一、はじめに          
  二、『烟花清談』について
  三、『契情畸人伝』における『烟花清談』『異本洞房語園』の利用
  四、『契情畸人伝』以前     
  五、複数の話を繋ぎ合わせた例   
  六、おわりに

 第四章 笠亭仙果の『異本洞房語園』受容とその周辺
  一、はじめに    
  二、仙果の識語と校合に利用した本  
  三、仙果の校合方針と柳亭種彦
  四、春馬、仙果合作における『異本洞房語園』利用  
  五、『店絃糸著連弾』の読まれ方
  六、改題本『高尾一代記』     
  七、おわりに

 第五章 『紅葉塚』の方法
  一、はじめに    
  二、『紅葉塚』の書誌      
  三、先行作品の利用
  四、『紅葉塚』に吹く江戸前期の風①其角編『焦尾琴』
  五、『紅葉塚』に吹く江戸前期の風②高尾       
  六、おわりに

 第六章 『紅葉塚』から『絵本高尾外伝』へ
  一、はじめに         
  二、『高尾外伝』の書誌 
  三、本文の異同と『高尾外伝』出板の背景      
  四、おわりに

第三部 理想化される遊女

 第一章 『艶廓通覧』における先行作からの影響と
             『傾城畸人伝』への改題について
  一、はじめに         
  二、『艶廓通覧』と改題本『傾城畸人伝』の書誌
  三、先行作からの影響及び作品の意図   
  四、明治における読まれ方   
  五、おわりに

 第二章 蒲生重章「四時詞倣蘇東坡」考
  一、はじめに  
  二、重章「四時詞」成立まで   
  三、詩の分析    
  四、おわりに

 第三章 『近世佳人伝』における漢詩
  一、はじめに      
  二、重章の詩観     
  三、遊興と作詩
  四、女郎を評する重章詩   
  五、おわりに

 第四章 『近世佳人伝』「花扇伝」の典拠と梁川星巌
  一、はじめに      
  二、『佳人伝』の評判    
  三、「花扇伝」の典拠
  四、梁川星巌の逸聞利用について   
  五、「花扇伝」成立の背景    
  六、おわりに

終 論

 附 論  大東急記念文庫蔵『清人賞辞文』について
  一、はじめに        
  二、構成と撰者    
  三、祖本の存在
  四、詩文が作られた状況   
  五、詩の特徴     
  六、おわりに

初出一覧
あとがき
索引

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内容説明

 日本近世の様々な文藝の題材となっている遊里。本書では、洒落本、合巻、読本のほか、古川柳、浮世絵、随筆、漢詩文といった幅広い分野に目を配り、近世中期から明治初期にかけての文藝の中で遊里や遊女がどのように描かれているか、また読者がそれらの作品をどのように受容したかということを論じた。従来の文学史では等閑に付されてきた作品を取り上げて、遊里文藝に対する新たな視点を提示することが本書の主たる目的である。
 
第一部では洒落本『遊子方言』や『甲駅新話』における登場人物の描写を読み解き、先行研究とは異なる読み方を試みた。また、山東京伝『客衆肝照子』に遺された旧蔵者による書き入れを紹介して、往時の洒落本の読まれ方を考察した。
 第二部では近世後期における吉原への考証趣味と文藝との関係について扱った。特に吉原の歴史や逸聞を記した写本『異本洞房語園』の諸本を整理し、同書が式亭三馬や笠亭仙果の合巻に趣向を提供していたことを論じた。また為永春水の中本型読本『紅葉塚』が先行文藝を利用しつつ近世前期の名妓高尾を主人公とした物語を展開していることや、それが半紙本に姿を変えて改題され、明治期に至るまで読み継がれていたことを取り上げた。
 第三部では近世後期から明治期の文藝に描かれる遊女に投影された作者の理想を読み解く。上方読本『艶廓通覧』は、これまで重視されてこなかった作品ながら、『傾城畸人伝』と改題されて明治期まで読み継がれた作品。同書の諸本を調査して再印、改題の過程を明らかにすると共に、遊女と客の貞節あるふるまいを讃える作風に注目した。客に対する遊女の真情を重視する価値観は、明治の漢学者、蒲生重章による漢文伝記集『近世佳人伝』にも顕著である。作中における漢詩の機能や、近世の文藝からの影響を指摘しつつ、同書を明治期漢学者による近世遊女礼賛の一例として位置付けた。
 附論では、近世中期に清人たちが二代目市川團十郎を題材にして詠んだ詩を載せた写本『清人賞辞文』の本文成立年代と内容について、従来の説を訂正した。本書は中国唐代の名妓、念奴を典故とする詩を載せており、式亭三馬と烏亭焉馬が自著で言及している書物でもあるため、遊里文藝の周辺と位置付けて末尾に附した。

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